緊縛縄の選び方

美しい縛り、安全な縛り、官能的な縛りを楽しく学ぶためには良い道具を選ぶことです。
どのようなジャンルの趣味でも使いやすい道具や愛着のある道具を手に入れることで趣味が数倍楽しくりますよね? サークルに所属して先輩の縄を使わせてもらったり、適当な紐で練習するのもいいと思いますが、 やはり自分専用の緊縛縄を手に入れて毎日縄に触れて慣れることが上達の近道です。

道具の選び方は個々人さまざまですが、まず自分がどのような縛りをしたいのかをハッキリさせることです。 そうはいってもなかなかハッキリした願望がなかったりすると、ますます悩んでしまいます。
そこで、失敗しない緊縛縄の選び方ですが、当店では技術を習得したいと思っている初心者の方には麻縄を薦めています。 時折、綿ロープや手芸用の紐などで縛りを始める方が良いという書籍やウェブサイトを見ることがありますが、あくまでも上達思考のあなたにはお薦めできません。
手芸用の紐は見た目も大変ソフトで優しいイメージがあり、縛られたことがない相手に不必要な不安を与えないという利点はあるのですが、紐が伸び縮みするために力加減が難しく、無意識のうちに強く縛りすぎる恐れがあります。 コンビニ袋の持ち手などを軽く縛ったつもりだけれど解けなくなったことはありませんか? 縄も同じ、ちょっとしたことで締まってしまうこともあるのです。
きつく縛りすぎたり、長時間縛りすぎることは体に負担がかかりすぎ大変危険で思いがけない怪我をさせてしまうことになります。

麻縄の良いところは、伸縮性のない縄で縛ることにより縄が効いているところと効いていないところが目で見てもはっきりわかります。効きすぎているところはギチギチに肌に食い込み、効いていないところは緩んで抜けそうになっています。伸縮性のない縄は力のかけ具合がわかりやすいのです。
また、時間をかけて縄をより使いやすく育てるという楽しみもあります。 「3つ縒りの麻縄」は麻の繊維を紐状に縒り、その紐3本を1本によることで作られています。
最初はゴワゴワしていて、硬く、縛りにくいし、解きにくく、もつれやすく、到底縛りに向くシロモノではありません。
少しでもいい状態で使っていただけるよう当店の縄は柔らかくする処理を施しお分けしていますが、時間的コスト、人的コストがかかりすぎるため十分なものではありません。
完全なものにするためには使うことが一番です。野球のグローブのように使えば使うほど手になじみ良い状態になります。 そうして自分専用の縄が完成していきます。
まだ新しい縄であるけれど使いやすくする方法はショップや個人が研究しそれなりの方法を知っている場合があります。
きちんと処理された緊縛縄は、麻の繊維がビシッと締まり表面は馬油や蜜蝋でコーティングされているのでつややかな髪に櫛が通るように、指どおりや抜けが素晴らしく大変扱いやすくなります。こういった処理を一般的に「なめし処理」といいます。

これから自分専用の縄を手に入れるうえで必要な条件とはどのようなものでしょうか? 縄選びの参考にしていただければと思います。

1.しっかりと拘束できること。
2.解きたいときに短時間で解けること。
3.吊りをしても切れないこと。
4.繊細な飾り縄がかけられること。
5.縄そのものの肌触り、手触りが良いもの。
6.縄跡が美しいこと。
7.使い込むごとに良い状態に育てられること。
8.美しい色合いであること。
9.メンテナンス性
10.耐久性
11.安全性
12.取り回しがしやすいこと。

1.しっかりと拘束できること 。

受け手の体をイメージ通りに固定することができるということは、自動車を安全に運転できることに例えることができます。 しかし、自動車のブレーキが甘かったり、ハンドルが切れなかったりするとどうでしょう。上手に運転できても、事故を起こす可能性があります。 縄に求められる性能の一つとして縄を留めたいところでしっかりと留められるだけの柔らかさが必要となります。ゴワゴワした縄ではしっかりと拘束することはできません。

2.解きたいときに短時間で解けること。

これも縄の性能となってきますが、縄を素早く解けるということは危険が差し迫った時からの開放時間が短くなるということです。 また、プレイが終了した後に縄のもつれや縄の食い込みによって解けないというほどしらけた雰囲気になることは避けたいものです。 解きやすい縄とはしっかりと処理された芯のある縄ということになります。

3.吊りをしても切れないこと。

時々、縄の強度のことでご質問をいただきます。「縄1本で何キロまで耐えられるか?」という内容のものがほとんどです。 縄屋には4.5mm、6mm、7mmの縄がありますが、吊りに使うのであれば6mm以上をお勧めします。
ジュート縄に関しては大変強い素材であるため通常1本で30kg以上は楽に耐えられると思いますが、できるだけ多い縄で吊上げ1本当たりの荷重を減らす縛りをしてください。また使い込んで切れかかった縄は早めに新しい縄に交換してください。

4.繊細な飾り縄がかけられること。

繊細な飾りに適した縄はより細いものが良いと思われますが、6mm程度の縄でも綺麗に処理された締まった縄であれば十分繊細な細工は可能です。

5.縄そのものの肌触り、手触りが良いもの

世の中には様々な道具がありますが良い道具は持つ人の心も豊かにする効果があります。
縄の状態が良ければ、きっと何かを縛ってみたくなり上達の近道になります。縄は受け手の肌にも直接あたるものですので不快な肌触りは避けたいものです。 できれば状態の良い麻縄を作り上げて頂ければと思いますが、ある程度の知識と経験が必要となります。

6.縄跡が美しいこと。

縄を解かれたあと縄の跡が肌に残ります。これはどんな縄で縛られてもある程度の力がかかっていれば必ずつきます。縄跡は掛け手、受け手ともに多くの方が美しいと感じ、愛おしく思っているようです。 縄跡を美しいと感じる人のほとんどは3つ縒りの縄跡が一番美しいと感じているようです。

7.使い込むごとに良い状態に育てられること。

縄の素材にもいろいろな種類があります。綿やアクリル等は糸の番手が細いため使い始めて 暫くたつと手の油を吸収し一気に朽ちていきます。 ジュート素材は大変強い繊維を使っているため比較的擦れなどにも強く耐久性があります。 また、綿などとは違い手の油、肌の油などを吸収しても比較的長持ちすることが特徴です。

8.美しい色合いであること。

天然色の麻縄の場合でも色の良し悪しがあり多くの場合、産地の気候に左右されます。
使い込むうちに若干黒っぽくくなってきますので考慮し選ぶのが良いでしょう。 また、染め縄に関しては色のムラ、ロットによって色のばらつきが出やすいので注意が必要です。 本格的に緊縛を始めようとする方は一度に多量を手に入れるほうが後々ちぐはぐな色で悩まなくていいと思います。

9.メンテナンス性

麻縄を良い状態に保つには毛羽を焼いたり油を塗ったりしなくてはなりませんので、 決して楽なものではありません。 時間のない方ははメンテナンスフリーの縄が適しておりますが使用感がジュート縄と異なってきます。

10.耐久性

縄が朽ちて3本縒りのうち1本が切れたり切れそうになっている場合は縄の寿命が終わったとお考えください。 荷重がかかる縛りは大変危険です。縄が朽ちる箇所は縄頭と縄尻に集中しますので、ある程度使ったところで 少しだけ縄を切ったりして縄頭を違った部分に逃がしてやるのも一つの方法です。

11.安全性

安全性は受け手の体重に見合った道具を使用することと体への負担が小さい縛りを心がけることに尽きます。 縄の太さは受け手の体重が重ければ7mm縄をおすすめします。4.5mmの縄に関しては大変危険ですので 熟練者以外は利用しないでください。

12.取り回しがしやすいこと。

取り回しがしやすい縄と受け手の体格、掛け手のリーチが関係してきます。 掛け手のリーチが短い場合長い縄は扱いにくいものとなり、何度も何度も手繰って(たぐって)いるうちに もつれることになるかもしれません。受け手の体が大きい場合、短い縄は何度も足し縄が必要になります。

これらすべての条件を兼ね備えた縄はないと思いますが、あなた自身が譲れない条件がはっきりすれば選びやすくなると思います。 ただ、一つだけ言えることは緊縛の道具である縄は信頼できる店で購入したほうがいいということです。緊縛用の麻縄で「なめし処理済み」と書かれてあっても未処理縄を束ねただけの粗悪品には十分注意してください。